日本農業新聞掲載に掲載されました[JA―DX 成功の鍵]⑤
(5)インフルエンサー巻き込もう 安定性は最初が肝心
プロジェクトチームの人選で三つ目のポイントは、仕事に前向きなインフルエンサーを巻き込むことです。あの人の言うことなら仕方ない――。言うことを聞こうと思ってくれる人のことです。
こういう職員を味方につけると心強いものです。ITの興味は若干あればいい。知識はそんなに重視しない。これから取り組んでいくのですから、詳しく分かる人はあまりいないことは承知の上です。ほんの少し知っていればいいのです。
むしろ必要なのは、仕事に前向きなことです。こういう人をうまく取り込めれば、大きなハードルを一つ越えたようなものです。この件では数人の職員が「私はぜひ参加したかったのに、どうして選ばれなかったのか」と言ってきました。多くの職員は関心があったのですね。
日頃から管理者や役員は職員とどう接しているのか。どれだけ職員のことが分かっているのかが重要です。全てにおいて人事は大切です。
最後は、立ち上げたプロジェクトチームをどう動かしていくかです。まずトップダウンで取り組み、徐々にボトムアップに切り替えるのが望ましいと思います。引っ張る立場の役員は、ある程度の完成形を予測しなければなりません。構想力が求められます。
皆さんの中には「トップダウンは今の時代に合わないのではないか。ボトムアップこそが必要なのではないか」と思われる方がいると思います。理想はそれでやる方がいいのですが、やってみると、なかなかそうはいかないという現実を私は見てきました。皆さんの中にも、経験がおありの方がいらっしゃると思います。
事業が成功するかどうかの鍵を握るのは7割方職員です。職員が納得しないと組合員までの話になりません。逆に、職員が納得するとあまりごちゃごちゃ言わないでもスムーズに事業は進むという面があります。どんな事業もおおむねそうです。どのようにして職員をその気にさせるかです。腹落ちさせるかです。
そのためには、入り口のところはトップダウンが良いように思います。強力なリーダーシップで方向性を決め、後で仕事がやりやすいようにしてあげる。そして、軌道に乗り始めたら徐々にボトムアップに切り替えていくと事業の安定性が出ると思います。最初が肝心です。