日本農業新聞掲載に掲載されました[JA―DX 成功の鍵]②
(2)プロジェクトを柱に 事務属人化から解放
デジタルトランスフォーメーション(DX)の導入に何が一番効果があったかと自問した時、真っ先に上がるのは、プロジェクトチームを改革の柱に据えたことです。これなくして大きな成果は得られなかったと確信しています。
メンバーは若手を主に起用しました。その彼らが前向きにいろいろな提案をしてくれたからこそ、デジタル化やDXを前に進める大きな力となりました。
具体的に説明しましょう。取り組んだのは生産資材の予約購買という、JAの経済事業の中で中核的な事業のDX化です。多大な手間と労働時間がかかっていました。
彼らプロジェクトメンバーは、課題解決のシステム構築には、まず対象となる業務の棚卸しが必要だと考え、予約購買の事務手順書(業務フロー)づくりから始めました。業務内容と手順を見える化し、無駄や重複を省き、不合理な慣例や作業者固有のやり方を改めたのです。そして、平準化された業務フローを土台に、注文書のデジタル化と基幹システムへの自動入力ロボット(ソフトウェア)を作りました。誰がやってもすぐに事務作業ができる職場環境に改善でき、大きな課題であった「事務の属人化」から解放されたのです。
ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)では、いわゆるロボット(ソフトウェア)を作って業務に取り入れていきます。ここで問題になるのは、ちょっと知識のある人が自己流で勝手につくったロボットが職場で増殖することです。野良犬に例えて「野良ロボット」と呼ばれます。
その最大の問題点は、作った人でないと不具合の修正や変更ができないということです。その人が異動したり退職したりした場合、事務が動かなくなり、ひいてはJA全体に大きな迷惑をかけることになります。その点、このプロジェクトチームで了承されたものだけを作るルールにすれば、「野良ロボット」の退治・予防ができ、安定した事務の継続が望めます。
システム事業者に丸投げするのは失敗のもとです。プロジェクトメンバーで分からないなりに考え、「自分ごと」として導入を進めていくことが重要です。こうすれば納得感があり、愛着も生まれます。職員全体にも広まりやすくなります。